筆者が展開するアウトラインの最新作「1980リビルドシリーズ」がようやく完成し、2020年12月21日(月)からタイムギア・オンラインショップで発売する。そこで繰り返しの内容で恐縮だが、あらためてどんなものかを紹介させていただきたい。
1980リビルドシリーズとは
1980リビルドシリーズは、80年代に日本で実際に販売されていたスイス製手巻き腕時計を再生させたものだ。これは昨年の11月に当時に輸入商社で偶然見つかったデッドストックの時計を、今回アウトラインでデザインをやり直し1年かけて製品化。つまり、ムーヴメント(中の機械)とケースはそのまま活用して文字盤のデザインのみをまったくの別物に変更したものである。
今回再生したのは全部で3タイプ。ひとつはクロノグラフの名門、バルジュー社の手巻きキャリバー7768を搭載した“ムーンフェイズクロノグラフ7768”。1793年創業というスイスの老舗ムーヴメントメーカー(現在はスウォッチグループのETA社が吸収)、フォンテンメロン社の手巻きキャリバーFHF138を搭載した角形時計で、ケースの仕様違いの2種類“レクタンギュラーIV138”と“レクタンギュラーBL138”だ。
右がバルジュー社の手巻きクロノグラフキャリバー7768。左がフォンテンメロン社の手巻きキャリバー、FHF138。どちらも1990年代に製造を中止したオールドムーヴメント
なお、未使用のデッドストック品ではあるが、ムーヴメントについては、そのまま使用するのではなく、すべて一度オーバーホールを実施し、再度調整を行なったうえで組み上げられている。そのため30年以上経ってはいるものの、ムーヴメントについては1年保証が付くため安心してほしい。
【各モデルのデザイン的特徴について】
■ムーンフェイズクロノグラフ7768
型番:Ref.20203-1/機能:時分表示、9時位置にスモールセコンド、日付け表示、クロノグラフ機構(12時位置に30分積算計)、/素材:真鍮ケース(裏ブタはステンレススチール)/サイズ:ケース径36mm/防水性:非防水/ムーヴメント:手巻き(Cal.Valjux7768)/限定本数:17本/税込定価:24万2000円/保証期間:1年
オリジナルのデザインは白文字盤にゴールドでバータイプのアップライトインデックスを配し、細いリーフ針を採用したとてもシンプルなものだった。それを今回は、ゴールドのアルファ針にアップライト仕様のローマンインデックスを合わせて1950年代風のデザインに仕上げている。
12時位置の30分積算計には、当時の積算カウンターに見られたテレホンユニットをさりげなく再現。かつては電話料金が3分ごとに加算されたため、それを確認するため3分ごとに目盛りが長くなっているというものだ。実は当時のクロノグラフの多くに採用されていたものである。
そして、このモデルの魅力は何と言ってもムーンフェイズにある。その小窓も大きく、しかもディスクに描かれた月にはいまでこそほとんど表現されなくなった顔が描かれており、古典的な雰囲気で味わい深い。わずか17本のみが製品化できたというものだ。
■レクタンギュラー138IV
型番:(左)Ref.20203-2(右)Ref.20203-3/機能:時分表示/素材:真鍮ケース(メッキ、裏ブタはステンレススチール)/サイズ:ケースサイズ24×31mm、ケース厚8.3mm/ムーヴメント:手巻き(Cal.FHF138)/限定本数:32本(シルバーケース6本、ゴールドケース26本)/税込定価:各11万円/保証期間:1年
これのオリジナルは、文字盤に数字などのインデックスや装飾は何もなく時分針だけというもの。つまりノーインデックスタイプのドレスウオッチだったためファッション性の強いものだった。それを今回はブレゲ風のアップライト(立体的な)のアラビア数字に置き換えて、1940年代のアメリカ製角形時計、俗に言う“角金時計”のような雰囲気に仕上げたのである。
ケースは丸みを帯びたシンプルなレクタンギュラーケースで、ワイヤーラグが施されたとても古典的なスタイルのため、ホワイト文字盤が少し経年変化したようなアイボリー系のカラーを採用。アラビア数字インデックスと時分秒針にはゴールドを使用し、大人っぽい落ち着いたデザインに仕上げた。製造本数はシルバーとゴールド合わせて32本。なお、シルバータイプはわずか6本だ。
■レクタンギュラー138BL
型番:(左)Ref.20203-4(右)Ref.20203-5/機能:時分表示/素材:真鍮ケース(メッキ、裏ブタはステンレススチール)/サイズ:ケースサイズ24×31mm、ケース厚8.3mm/ムーヴメント:手巻き(Cal.FHF138)/限定本数:限定33本(シルバーケース15本、ゴールドケース18本)。各13万2000円/保証期間:1年
もうひとつの角形タイプは、そもそもケースの作りに魅力があった。側面に段差を設けた通称ステップドタイプのケースが採用され、加えて12時と6時位置にはさりげなくちょっとしたオーナメントがあしらわれるなど、時代を感じさせる造形が施されていた。しかも、このオーナメント自体は別体で取り付けられたもので、作りも凝っていたのだ。
そのため文字盤デザインは、この装飾的なケースに対してそれをおさえる意味で、あえて地色にブラックを採用しつつ、インデックスに太めのアラビア数字を使い、文字盤デザイン自体を男っぽく存在感のあるものにしている。製造本数はシルバーとゴールド合わせて33本。
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