【知っておきたい腕時計の基本】意外と知らない人も多い!? “ハック機能”ってなんだ?

 いまでは、“時刻合わせ”を行うことがほとんどない高精度なクォーツ時計や、自動で時刻修正をしてくれる電波時計などが普及しているため、意外とこの機能を知らない人は多いかもしれない。

 一般に“ハック”と呼ばれるこの機能は、リューズを引くことで針を止める“秒針停止機能”のことだ。
 これは、主に時刻合わせを行う際にマスターウオッチ(基準となる時刻を表示する時計)の時刻と秒単位で正確に合わせるために使うもので、第2次世界大戦時の軍用時計にいち早く導入された。この時代、軍の作戦が高度化したことで各兵士が同じタイミングで任務を遂行する重要性が高まり、それぞれの時計の時刻もきっちりと合わせる必要があったためである。ちなみに“ハック”という言葉は、兵士たちが時刻合わせを行う際の掛け声に由来していると言われる。

 今日の腕時計ではほぼ標準装備されているハック機能だが、市販の腕時計に普及したのは、大戦後かなり経ってからのことで1960年代後半と言われている。
 こう聞くと、複雑なメカニズムで、開発には高度な技術を要する機能なのかとも想像するが、実はそんなことはなく、メカニズムはいたってシンプルだ。一般への普及が遅かった理由は、おそらく特許の壁があったか、もしくは、当時の多くの人々が秒単位までの正確性を求めていなかったか、ではないだろうか。

 さて、意外とシンプルと言ったそのメカニズムだが、一般的なのはリューズを引いた際に、それと連動したレバーが飛び出し、運針を司るテンワを押さえつけて強制的に停止させるというもの。意外と力業的な機構なのである。なおクロノグラフ機構でもこれと同じ発想で、運針を止めるブレーキレバーがある。

リューズを引くことで、ハックレバー(赤丸)がテンワや歯車に押し付けられ、その動きを停止させる

 ハック機能には、テンワではなく4番車をレバーで押さえるものなどいくつかのタイプがあるが、考え方は基本的に同じ。一方でレバーの厚みや取り回しやなど各社で異なる点もあるので、機会があれば見比べてみてほしい。
 なお、停止させる際にほかのパーツに負荷が掛かり過ぎないよう、レバー自体が繊細なタイプもなかにはある。こうしたタイプの場合、折れることもある(頻繁にあることではないが)ので注意が必要だ。リューズを強く引くなど、負荷が掛かる使い方は普段から避けたいところだ。

 

文◎堀内大輔(編集部)