【OUTLINEのアウトライン|no.4】 最長1年半待ちだったミヨタ社の自動巻きムーヴメント!

 連載4回目は、アウトラインで採用しているミヨタ社の自動巻きムーヴメントのことについて書きたいと思う。

 ご存じの方も多いと思うが、ミヨタ社はシチズン傘下の汎用ムーヴメントを製造する日本のムーヴメント専門のメーカーである。日本製であるという信頼性に加えてスイス製よりも安価ということから、いまでは世界中の時計メーカーが採用するほど人気が高い。

写真はアウトライン・コンプレダイバー1960に採用したミヨタ社製自動巻きムーヴメント。その中でも最上位機となる9000系のCal.9015だ。ほかにスタンダード機として8000系がある

 このミヨタ製ムーヴメントだが、特に機械式に至っては、発注後1年〜1年半待ちと言われるほどの異常な状況となっていたのである。理由は近年になって中国の時計メーカーが採用するようになったため、もともと生産量自体がそれほど多くはなかったところにきて、需要が極端に増えたことが大きな要因である。実はその影響をもろに受けたのがアウトラインの第3弾として発売した、俳優・木下ほうか氏監修の“パートナー1(下の写真)”だった。

俳優の木下ほうか氏監修のアウトライン・パートナー I 。先行予約を受け付けたクラウドファンディングでは、1400万円以上もの支援を集め、2種類あったデザインのうち写真左のデザインは完売したが右は現在もタイムギアオンラインショップで販売中だ。6万6000円

 このパートナー I だが、実は当初ミヨタ社のものを採用し本来であれば2020年4月の発売を予定していたのだが、ほぼデザインが1年がかりでやっと固まったと思いきや、今度はミヨタ製自動巻きは入手に1年半ぐらいかかりそうだだということが判明、4月発売どころか翌年の21年になりかねないとなったのである。

 今回は、ちょうどセイコーエプソン製の自動巻きムーヴメントが他社に供給するようだという話を聞き、急遽セイコーエプソンに打診。スペックはもちろんだが、サイズなども問題なかったことから今回はセイコーエプソン製 Cal.YN55Aに切り替えて問題なく発売にこぎ着けたというわけである(結果的にコロナの影響で発売自体は10月にズレ込んだが)。

 コロナ下のいま、さすがのミヨタ製自動巻きも1年以上待つという状況にはないが、経済が回復すればいずれはまた同じ状況になることは容易に察しがつく。汎用ムーヴメントを製造するメーカーはごく限られるだけに、今後時計を開発していくうえで、ずっと付きまとうであろう頭の痛い問題になりそうだ。それにしても中国の時計メーカーが自国ではなく日本製を使うようになったとは…。

 さて、次回もミヨタ製ムーヴメントについて、もう少し書いてみたいと思う。4月3日(土)18:50分に配信予定。

アウトライン公式ウェブサイト

タイムギアオンラインショップ

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。