【鍛治職人と時計師の最強タッグ】ダマスカス鋼を取り入れたスウェーデンの独立系ブランド“ゴース・ウォッチ”に注目

》鍛治職人と時計師が生んだスウェーデンの異色ブランド

 GoS Watches (ゴース・ウォッチ)は、刃物職人のヨハン・グスタフソンと時計職人のパトリック・シェーグレンにより、スウェーデンで製造されている日本未上陸の時計ブランド。


 2007年に二人は知り合い、金属加工技術とスカンジナビア伝統工芸に対する情熱を共通していることに意気投合し、独立マイクロウオッチブランド、ゴース・ウォッチを設立。手作業で鍛造したダマスカス鋼を時計に取り入れ、これまでの北欧ブランドにはない、個性を表現した一点モノの時計を製作することになった。


 諸説あるが、ダマスカス鋼はインドに起源をもつ木目状の模様を持つ鋼の名称。中世の十字軍が遠征後に加工技術をヨーロッパに伝えたとされ、中世のヨーロッパでも製造されるようになったとされている。鋼材を積層鍛造することで生まれる縞模様が最大の特徴として知られており、ゴース・ウォッチでは、主に文字盤に採用され、独特の美しさを生み出している。


 加工を手がけるグスタフソンは過去20年間、刃物職人としてナイフの刃を鍛造してきた人物。 彼の作品は数々の国際的な賞を受賞し、モザイク・ダマスカス鋼と呼ばれる技術を開発したことでも知られている。この技法は異なる鋼種を重ね合わせて鍛造し、1つのピースにすることにより実現しており、1枚の板を新たな棒状に切り出し、再鍛造する、繰り返しの作業で作り出す。ゴース・ウォッチの文字盤にはスウェーデンの高級工具鋼をベースに、128層の加工を施すことで生まれる美しいパターンが特徴。この技術は文字盤だけでなく、ケース、針、ベゼル、さらにはムーブメントなどのパーツにも使用されている。


 パトリック・シェーグレンは仕上げとディテールにこだわる時計職人で、2007年にスウェーデンのウォッチメーカースクールを卒業後、スウェーデンとスイスのウオッチメーカーの資格を取得している。


 コンピュータサイエンスとエンジニアリングの修士号を持つシェーグレンは細部の作りにも並々ならぬこだわりをもち、理論的な知識と実践的なスキルをダマスカス鋼の文字盤やその他の時計部品の仕上げに活かしている。リューズ、針、ムーブメント部品の一部は手作業で製造、仕上げを行っており、ハンドメイドならではの質感が、ゴース・ウォッチならではの魅力となっているのだ。

 ゴース・ウオッチでは、既存のモデルに加えカスタムメイドサービスも展開しており、グスタフソンがデザインした時計に使われているダマスカス鋼の技法や、彼の幅広いナイフコレクションの中から、パターンや色をリクエストすることも可能だ。


GoS Watches (ゴース・ウォッチ)
サレク・アッカ


 スウェーデン北部、ラップランドにあるアッカ山の名前を冠した、サレク・アッカは伝統的な無着色のダマスカススチールに回帰した164層のダマスカス鋼文字盤にグレースケールのハイコントラスト仕上げが施されている。この文字盤はグスタフソンが手作業で製作し、シェーグレンが機械加工と仕上げを行なっている。

 ケースサイズ43mmで、ムーブメントはゴース・ウォッチ独自のトリスケル・ローターを搭載したSoprod A10を搭載。ダークサテン仕上げ、ダマスカス鋼の追加カウンターウェイトが採用されている。

 木工職人である、ホーカン・ヤンソンが手作りした無垢のウォールナット材から作られているスライド式のオリジナルボックスも美しい。 販売価格は1万1800米ドル(約130万円)で、完全受注生産となっている。


GoS Watches (ゴース・ウォッチ)
ノールフィアン


 ノールフィアンはスウェーデン語でオーロラという意味を持ち、ダマスカス鋼製の文字盤、ギョーシェ加工のスペシャリストであるヨッヘン・ベンジンガーの手彫りのギョーシェ文字盤のどちらかを選択できる。

 ケース径は41.5mm。オプションでブラックダマスカスのケースリングとダマスカスのスチール製ベゼルを付けることが可能だ。

 ムーヴメントはシュワルツ・エティエンヌの自社製キャリバーをベースに、ゴース・ウォッチが特別な仕様変更と仕上げを施した機械が搭載されている。この時計の小売価格は1万9500米ドルから2万5000米ドル(約216万円〜276万円)だ。


》GoS Watches (ゴース・ウォッチ)公式サイト
https://www.goswatches.com


文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。

https://www.instagram.com/spherebranding/